8月31日朝7時。
このチャレンジが始まって4日目の朝。
8月28日の朝に福島県の甲子温泉をスタートして那須岳、塩原温泉、高原山、川治温泉から奥鬼怒エリア、そして白根山や太郎山などの奥日光の山々を越え、約70時間をかけてやっと男体山の麓まできました。
残りは男体山、大真子山、小真子山、帝釈山、そして女峰山の5つの2000m級の山々を含む25kmほど。
ここまで225kmを進んできて、ゴールまではあと25km。
距離からすればもうたったの25kmですが、この時の私には「たったの25km」なんてことは全く思えませんでした。
この先の山が険しいこと、そして私の足裏の痛みはもう限界を迎えていたこと、それに加えてこの日の天気予報は午後から雷・大雨注意報。
特に帝釈山から女峰山への稜線は雷がきたら逃げ場もない危険な場所。
そんな場所へこんな疲労と痛みでいっぱいの体で行っていいのか・・
ペーサーを道連れにして・・
そんなことをずっと考えていました。
とりあえずこのチャレンジが始まってから13個目のエイドである二荒山神社の駐車場で今までで一番長い休憩をとることにしました。
しっかり補給をして、着替えをして、約1時間睡眠をとりました。
ただ、この休憩をとっている間も、私の中での迷いは続いたままで、この先どうするかなかなか決められずにいました。
でも、起きて車から出ると、ここから先のペーサーをしてくれる高山さんと美穂さんが元気に私のことを迎えてくれて、二人の顔を見たら「まだ行ってみよう」と決心がつきました。
心配なのはお天気だけど、とりあえず男体山を登って下りるまではまだ大丈夫そうだったので、まずはそこまで行ってみようと。
そして、この先進むための準備をして、9時30分が過ぎた頃二荒山神社をスタートしました。
二荒山神社の境内から男体山登山道は始まります。
男体山は標高2484m。麓から山頂までは距離約5kmで高低差1200m。とにかくひたすら急登が続く独立峰です。
私も過去にこの男体山で24時間連続登頂記録にも2回挑戦したりと、とても思い入れのある山です。
なので、このチャレンジでこの男体山まで来られたことはすごく嬉しいことでした。
登り始めると、ゆっくりだけど登りだけだから足裏への衝撃も少なく、なんとか足は前に進んでいきます。
ペーサーの高山さんと美穂さんとのお喋りも楽しくて、キツさも忘れるぐらいでした。
男体山の険しい岩場をゆっくりゆっくり登っていきます。
何時に山頂に着いたかは覚えてはいないのですが、おそらく2時間ほどで山頂に到着したと思います。
山頂は真っ白なガスの中で景色は見られなかったけど、ここまで来られたことに安堵の気持ちが大きかったなと思います。
山頂付近はガスの中。
男体山登頂!!ここまで本当に長かった!!
山頂では15分ほど休憩をして、少し寒さも感じたのでシェルを羽織って、反対側の志津林道へ向かって高低差約700mを下っていきます。
ただ、この下りでの足裏の痛みは本当にキツく、ストックになるべく体重を預けて、足裏へ負担をかけないように下りていきましたが、それでも一歩一歩下りていくのに痛みを堪えなければいけませんでした。
そして、登りに比べてもだいぶ時間がかかってしまいました。
そんな私を見ながら二人のペーサーは通りやすい場所を指示してくれたり、障害物を避けてくれたり、いろんな話をしてくれたり、とても気を使ってもらって本当にありがたかったです。
そして、なんとか最後のエイドである志津へ下りてくることができました。
でも、この時にはもう私の心の中は決まっていました。
エイドがある志津は車で入って来れないので、旦那さんとコバさん、そしてこの先一緒に山に入ってくれる準備をしていたロコ姉さんが、たくさんの荷物を持って4kmの林道を歩いて待っていてくれました。
3人の顔を見てホッとして、
ちょっと補給をとってから、
「私、ここでやめます」
って言いました。
もうこの足裏の痛みでは、この先登りは登れても、下りを下りていける気がしない。
特に女峰山からの高低差1700mの下りは、どれだけ時間がかかってしまうのか想像もつかない。
そして、そんな状況で雷がきても急ぐこともできないし、ペーサーのみんなを待たせてしまうかもしれないし、そんな危険な目には合わせられない。
サポート、ペーサーのみんなは、私の決断をすんなり受け入れてくれました。
ここまでよくやったよ、って言ってくれて、嬉しいのか悲しいのか悔しいのか辛いのか、よくわからない感情の涙が出ました。
途中でやめてしまえば、それはどれだけの距離を進んでいてもDNFだし、「完走」にはなりません。
でも、私個人の挑戦をここまでサポートしてくれる人たちがいて、何人もの方がペーサーをしてくれて、応援に駆けつけてくれた方もいて、SNSで見ていてくれた方もいて、そしてこんなことを応援してくれる旦那さんがいて、本当に私は幸せ者だなということを、ずっと感じられるチャレンジとなりました。
そして大好きな山と76時間もの時間、向き合い続けさせてもらえたことに、本当に全てに感謝せずにはいられません。
「こんな挑戦をしてみたかった。」
という挑戦ができました。
自分の実力が足りてなくて、やり遂げることはできなかったけど、それでも、たくさんの人と共に旅ができたこの挑戦をしたことに、1ミリも悔いはありません。
皆さん、本当にありがとうございました!
最後にフルーツポンチなどの差し入れを持ってきてくれた黒川さん、静さん、ありがとうございました!
サポートし続けてくれた旦那さんと。長い長い旅でした。ありがとう。
スタートから志津まで
距離:232km
獲得標高:14593m
時間:76時間45分
睡眠時間:3時間24分
日光国立公園縦断チャレンジ:DNF
Yukari Hoshino
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